現在、先日出された「永住許可に関するガイドライン改定案」について、9月4日までパブリック・コメント手続きが行われています。
今回の改訂案は、従来から審査していた納税・年金・各種届出等を、法律上も明確に位置付けるだけでなく、年収や年金についてより具体的に踏み込み、現状からはかなり厳格化されました。
※出入国在留管理庁HP「永住許可ガイドライン改定案」
新たなガイドライン(案)のポイント
1、法律上の義務・公租公課
「税金・年金等を適切に支払っているか」など、従来から審査されていた事項が、法律上の要件として明確化。現在の未納だけでなく、過去の不適切な支払いも原則マイナス評価。
2、収入
「安定した収入があるか」という考え方から、世帯年収+世帯人数を基準に、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準を継続して満たしているかを考慮することを明確化。
3、年金
単なる加入・納付状況だけでなく、将来の年金受給見込額まで考慮。さらに、不足する場合でも不足分を補える金融資産があれば考慮される仕組みを明記。
4、日本語能力
これまで明確な水準を示していなかったところ、原則として「日本語教育の参照枠」B1相当以上を考慮要素として明記。ただし、試験を義務づけるものではなく、一定の高度人材・その家族等は例外。
5、日本の制度・ルールの理解
新たな考慮要素として明文化。生活・就労ガイドブック等を中心に、日本の制度・ルールを理解しているかを確認し、理解が乏しい場合は消極評価。
6、学齢期の子どもの就学
新たな考慮要素として明文化。申請者が学齢期の子を養育している場合、子どもが小学校・中学校に通学していることを考慮。
7、在留期間
現在の在留資格について、「最長の在留期間」を持っているかを明確な考慮要素として追加。さらに、2027年4月以降の「3年」在留期間について経過措置を規定。
これまでも、住居地や所属機関の変更、配偶者に関しての各種届出義務がきちんと履行されているかや、公租公課の支払いが適正に行われていたかなどは審査の対象となっていましたが、改定案では、年金について「これまでちゃんと年金に加入し適正に納めていたか」だけではなく、「将来いくら年金をもらえるのか」まで審査対象となります。
仮にもらえる年金が少なかったとしても、それを補うだけの十分な金融資産があり、将来の生活水準を維持できれば年金水準を満たしているものとして評価されますが、これから先一体いくらあったら将来の生活水準を維持できるといえるのだろう…と、ふと己の老後のことを考えていしまいました。
年金を補う金融資産については、若い世代の場合、年金受給まで期間が長く、これから資産形成する十分な時間があることから、申請時点での金額が少なくても認められるようです。逆に年齢が上がればそれだけ求められる金額も大きくなります。
また、夫婦の場合はそれぞれの受給見込み額が合算され、、配偶者が一定期間、申請者の被扶養者として国民年金第3号被保険者だった場合には、その配偶者について見込まれる年金額も考慮して「受給年金水準」を設定します。
年収については、従来の「申請者本人が安定した収入を得ているか」という見方から、改定案では、「同一生計世帯の世帯年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているか」を考慮することが明確になっています。
扶養している人数や外国にいる親類を扶養している場合それらも扶養者にカウントされ、本人の収入がその分求められるのはこれまでも同様でしたが、「日本人の世帯の平均収入を上回る水準」に「継続して達している」ことが必要で、さらに同じ世帯にいる人が「家族滞在」など、就労を目的とした在留資格ではない場合、その人が資格外活動許可を得てアルバイトなどで収入を得ていても、その収入を世帯年収に合算する対象にはしないとされています。
また、同じ世帯に住んでいても、成人しているなど、父母の扶養から外れている人については、父母の収入を合算するのではなく、その本人についての年収水準が考慮されます。
日本語能力についてはこれまで明確な水準は示されていませんでしたが、今回の改訂案には明記されました。「日本語教育の参照枠」におけるB1とは、ざっくり言うと、
「相手の話の要点を理解して、自分の意見を伝えられる」
「職場で仕事上のやり取りができる」
「日常生活上の説明を理解できる」
「自分の経験や考えをある程度説明できる」
といった、日常生活や仕事など、身近な社会生活の場面で、日本語を使ってある程度自立してコミュニケーションできるレベルです。
日本語能力についてはB1の試験の合格が絶対必要なのではなく、「B1相当以上の日本語能力があるかを永住許可の判断材料にする」ということです。実際に日本語能力を立証することを考えると、B1を取っておく方がわかりやすいともいえるかもしれません。
新たに要件として加わった日本の制度・ルールの理解と併せて、これまで、10年以上日本に居住していれば、生活に必要な日本語能力や日本文化や生活ルールの理解はある前提、とされていたものが、今回の案では「日本社会への適応」について具体的な要件となっています。
今回の改訂案は、あくまでも現時点では「案」であり、まだ決まったわけではありませんが、これまで長く日本社会の一員として暮らし、納税等の義務を果たし、今後も日本で生活するために、現ガイドラインに沿って永住許可申請を準備していた外国人の方が最も影響が大きいと思います。
今後パブリック・コメント手続きを経て、どのような改訂がなされるか注視したいと思います。